| “いい料理”とともに楽しみたい歴史が生んだ名酒
かつて水陸交通の要所として盛えた草津。3代将軍家光の命を受けて、その動静を見守る関守(せきもり)の役目を代々務めてきたのが太田家。
太田家の酒造りは、約130年前の江戸末期にさかのぼります。当時、領土としていた田畑と、その年貢米の近江米を有効に使うために酒造りを始めたんだそう。
「酒作りの歴史は、そんなに古くないのですが、草津宿を守ってきた“太田家”としての歴史は古く、先祖には江戸城を築城したことで有名な、“太田道灌”がいるんです。その名前をもらって、うちには“道灌”という酒があるんですよ。」
そう話してくれたのは、現太田酒造社長の太田實則さん。
日本酒“道灌”は、今や知る人ぞ知る名酒。記者がその酒についてたずねると、
「酒っていうのは、いい料理とともにあってこそ。酒だけっていうのはね(笑)。
おいしい料理と一緒に飲んでください、としか。」
と控えめな答えの太田さん。
太田酒造の酒にはファンも多く、まろやかな香りと爽やかな味わい、さらに酔い心地も最高と評判です。
続けて、太田さんが
「先代は、かなりの苦労人でしてね。」
と。酒造りを極めるだけでなく、新しいことにも積極的に挑戦していったという先代。昭和21年には、栗東の広大な荒地を開墾し、ブドウ畑を作りあげました。
当時では、まだ少なかったワインの醸造を開始。理想的なブドウ園にするために、表土と低地を取り替える「天地返し」という大作業を行ったんだとか。
先代の苦労が報われ、今ではヨーロッパの最高級品種といわれるブドウを栽培するまでに。
「いいワインは、いいブドウ。これにつきます。ブドウがすべてですね。」
と太田さん。
そのほか、焼酎やブランデー造りにも力を入れています。
先代の作りあげた“酒造り”の土壌を守り、継承していくー。
そして、時代の流れに応じた新しい試みを次々と発案していく太田酒造。
同店の蔵からは、歴史の重みと、“今”の時代の息吹が感じられます。
老舗新発見シリーズ「太田酒造」 <リビング滋賀新聞 2005年8月27日に掲載> |